ホームページの制作費は、 いったい何の値段なのか。
私がその答えを持つようになったのは、
よかウェブ九州立ち上げよりずっと前、
商工会議所の仕事で企業を回っていた頃の
ある一件がきっかけでした。
2000年代後半なので、20年近く前の話になります。
数字の話をする前に、
まずその現場のことを書かせてください。
ご依頼の内容
「新しく始める海外展開のサービスを紹介するホームページを作りたい」
というご相談でした。
準備はかなり整っていました。
- どなたかの助言を受けて、ホームページのテンプレートを購入済み
- 自社のパソコンにホームページ・ビルダーが入っている
- サーバーもドメインも手配が済んでいる
- 社内の従業員の方が1名、担当として決まっている
- その担当者は、パソコンスキルはあるがホームページ作成経験は無い
当初のご希望は1ヶ月で完成させること。
条件だけを見れば、無理のない計画に思えました。

実際に起きたこと
完成までに、6ヶ月かかりました。
私の手元の記録では、
訪問した回数は18回。
1回あたり2時間から3時間、
平均すると2.5時間。
合わせて45時間です。
理由は、はっきりしています。
会社の業務が忙しく、
仕事の合間にホームページをさわる時間が
ほとんど取れなかったのです。
実質的に作業が進むのは、
私が事務所にお邪魔している時間だけでした。
能力の問題でも、
意欲の問題でもありません。
本業が優先された。
ただそれだけのことです。
45時間は、何に使われたか
当時の私の役回りは技術サポートが主で、
パソコンインストラクターという色合いが強いものでした。
ですが、実際にお手伝いしていた中身を思い返すと、
操作の説明だけではありませんでした。
覚えている範囲で、こんなことに時間を使っています。
- トップページの構成を決めること
- 自社の言葉としての文章を書くこと
- ホームページ・ビルダーとウェブアートデザイナーの使い方
- 所々が英語のダミーのままになっていた箇所を、日本語に置き換えること
- 購入したテンプレートと、ホームページ・ビルダーに付属していた素材との、デザインの違いをどう埋めるか
並べてみると、
性質の違う3種類の作業が混ざっているのがわかります。
(1) 道具の使い方を覚える時間。
(2) 中身を決めて書く時間。
そして、 (3) テンプレートが持ち込んできた時間です。
テンプレートが、作業を増やしていた
3つ目について、少し詳しく書きます。
このお客様は、安く早く作るために
テンプレートを購入されました。
ところが実際のところ、
テンプレートを買ったことが
作業を増やしていた面がありました。
英語のダミー文章を日本語に置き換える作業は、
翻訳ではありません。
「この枠に、うちの何を書くのか」を決める作業です。
テンプレートは枠を用意してくれますが、
中身までは用意してくれません。
埋めなければならない枠の数だけ、
宿題が増えていきます。
購入したテンプレートと、
ビルダーに付いてきた素材とで、
デザインの方向が揃わないという問題もありました。
安く手に入るものを組み合わせると、
そのつなぎ目を人が判断して整えることになります。
電話が鳴る、ということ
もうひとつ、書き添えておきたいことがあります。
担当されていた従業員の方は、
電話番も兼ねておられました。
ですから、私が訪問して作業を進めている最中も、
中断はしょっちゅう起きました。
小さな会社で、電話が鳴らない日はありません。
誰かが取らなければならない。
取るのは、大抵いま手が空いているように見える人です。
6ヶ月かかった理由を、
いちばん正直に説明する一文があるとすれば、ここだと思います。

では、本業を止めていたら
もし社内の方に、
通常の仕事はしなくていいから、
ホームページ制作だけをやってほしいとお願いしていたら、
どれくらいの時間がかかったでしょうか。
私の見立ては、およそ1ヶ月でした。
週に5日、4週間、1日8時間として、160時間です。
当時、その方の給与を月18万円と置いてみます。
この金額は、私の記憶を頼りにした数字です。
ですが、あとから統計を確認したところ、
それほど外れていませんでした。
厚生労働省の平成19年賃金構造基本統計調査によると、
その年の大学卒の初任給は、全国の男女計で195,800円。
中小企業で何年か勤めた事務職の方として、
18万円という置き方はむしろ控えめなほうでした。
そして、会社が実際に負担する額は18万円では終わりません。
給与から天引きされる社会保険料とは別に、
会社の側も同じだけの保険料を負担しています。
厚生年金、健康保険、雇用保険、労災保険。
当時の料率で積み上げると、
給与のおよそ13パーセントが会社の持ち出しになります。
賞与まで含めて年間でならせば、
月あたり20万円台の前半というところです。
つまり、あのホームページを社内で完成させようとしたら、
当時のお金で20万円から23万円ほどの人件費がかかっていた計算になります。
いまの数字に直すと
同じ計算を、現在の賃金水準でやり直してみます。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、
新規学卒者の賃金は男女計で大学卒248,300円。
2007年の195,800円と比べると、およそ1.27倍です。
18万円に1.27を掛けると、228,000円ほど。
会社の負担分まで含めると、26万円から29万円あたりに落ち着きます。
よかウェブ九州のホームページ制作費は、
ちょうどこの帯の中にあります。
思いつきで決めた金額ではありません。
20年近く前に自分の目で見た実測値を、
賃金の伸びで引き直したものです。
制作費は、何の値段なのか
よかウェブ九州がいただいている制作費は、
社員をひとり、1ヶ月まるごとホームページ制作の専任にしたときの人件費と、
同じ帯にあります。
違うのは、たったひとつです。
誰も、本業を止めなくていい。
道具は、あの頃よりずいぶん速くなりました。
それでも160時間という見立てを変えていないのは、
短くなったのが、道具の使い方を覚える時間だけだからです。
中身を決めて書く時間も、
思わぬことに手を取られる時間も、減ってはいません。
あのとき私が使ったのは、 6ヶ月かけて45時間でした。
社内で抱え込めば160時間。
しかも、その160時間のあいだ、 電話は鳴り続けます。
見積書の金額だけを並べて比べても、
高いのか安いのかはわかりません。
比べる相手が、そこには書かれていないからです。
比べるべき相手は、他社の見積書ではなく、自分の会社の時間です。

おわりに
20年近く前のあの事務所で起きていたことは、
いまもどこかの会社で同じように起きています。
これを自分たちだけでやったら、
誰の時間が、どれだけ消えるだろうか。
その問いに答えが出れば、
見積もりの数字は、ずいぶん読みやすくなるはずです。
ご相談を承っています
費用のことも、時間のことも、
最初に一度、一緒に整理しましょう。
ご相談は無料です。
もし、心当たりのある方がいらしたら
ここまで読みながら、
どなたかの顔が浮かんだかもしれません。
見積もりを前に迷っている方。
テンプレートを買ったまま、止まっている方。
電話を取りながら、
いつかやろうと思い続けている方。
もしお近くにそんな方がいらっしゃいましたら、
この記事のことを教えてあげてください。
ご紹介いただければ、私からお話を伺います。
※本文中の賃金の数字は、厚生労働省「平成19年賃金構造基本統計調査(初任給)」
および「令和6年賃金構造基本統計調査」によります。
統計の確認と計算には、AIの力を借りました。
決めたことと、書いたことは、私自身の手によるものです。

